連載コラム
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コラムサラリーウーマン金太郎 ── いよいよ独立起業編
Vol.5 「スーパーウーマンなんていないよPart2 〜精密検査の結果〜」
(21.May.2003)
急病棟ERで相変わらず咳の発作を起こし、平らに眠ることもできずに朝を迎えた私は、それでも、まだ自分の身に起きていることが信じられなかった。しかし、酸素マスクと点滴の腕を見つめ、咳き込むと痛いわき腹(肋骨にひびが入っている)を押さえていたら、怒りと涙がこみ上げてきた。
「私はスーパーウーマンのはずでしょう? あんなに体鍛えていたのに、全く何やってるのだろう? 仕事はどうなっちゃうのだろう?」
半べその私に、あらあら大丈夫と看護婦さんが優しい言葉をかけてくれた。私は内科病棟の3人部屋に移動した。そして、担当の先生が来た。
「無理をしていましたね。肺炎になるまで頑張るなんて駄目ですよ。あなたの場合は精神的なタフさに肉体がついていってないのですよ。体の悲鳴を聞いてあげなさい。もっと自分の体を大切にしないとね」
「先生、いつ退院できますか? 3日くらい、1週間くらい?」
「最低2週間、いや3週間は入院になると思いますよ。あなたは、肺に菌が感染して肺炎になってしまったのです。この菌が無くなり、体が回復するまで駄目ですよ。ずいぶん無理をしていたようだし、この際、体全部の精密検査もしておきましょう。1週間くらいして、体力が回復してきたら検査をしますよ。体のメンテナンスを徹底的にしておきましょう」

 翌日は教授回診だった。大学病院特有の教授、担当医師それに医学生がぞろぞろと20名。皆、酸素マスクのキャリアウーマン(?)が珍しそうだ。
「この患者はマイコプラズマ肺炎だ。オリンピックの前の年に流行ると言われている菌だが、まさしく今年もそうだな。また症状は喘息の発作のような感じが続き……。そして咳で肋骨がひびも入ってしまっている」
20人の顔が一瞬、「ほーっ」と言ったような気がした。「そんなになるまで働いてバカみたい」と心の声が聞こえるような気もした。
思い起こせばこの5年間くらい体を労わるような休み方は一度もしてこなかった。なんでそんなに急いだのだろう、なんでそんなに焦ったんだろう、なんでそんなに頑張りすぎたんだろう? その努力の結果がこの状態なんて…。私は自分の体に対して申し訳なさいっぱい、深い後悔を感じ始めていた。

 夕方、アシスタントのサキちゃんが来てくれた。3週間は絶対安静。仕事の指示も無理と筆談で状況を説明した時には、私はもはや会社のこと、大切なプロジェクトを含めて仕事は何も頭の中に無かった。今あるのは、この体がもう一度復活して活き活き人生を過ごすこと、それだけを祈っていた。
治療はゆっくり行われた。毎日、動脈からの血液採取は泣くほど痛く、食事代わりの点滴で腕も曲げられなくなってしまった。しかし、不思議に静かに時が流れ、私は穏やかな気持ちになっていった。私は本を読み始めた。ビジネス書ではなく小説や雑誌を。しゃべることが出来ない状態で文字に目を落としていると、いやがおうでも自分自身との対話が始まる。そして見舞いに来てくれた彼と筆談をしながら、人の優しさも身にしみた。
2週間が過ぎたとき、ようやく酸素マスクが外れ、人並みに食事をし、歩くことができる状態まで体力も戻ってきた。私は心に誓った。「もう無理をするような生活はしない。自分を大切にしよう」。そこへ、担当の医師がやってきた。
「精密検査で子宮筋腫が見つかりました。大きさや、年齢的なことを含めて手術をお勧めします。明日、婦人科で更に検査を受けてください」

検査の結果は卵大の子宮筋腫が外側に向かってできていて内臓を圧迫しているらしい。そういえば、ここ数年かなり生理痛もひどくなっていた。ウエストも気のせいか太くなっていた。原因はいろいろあるが、ストレスが最も大きいらしい。放置すれば、更にどんどん大きくなっていくという。また悪性になる可能性もあるとも言われた。手術は出来る限り早くしなさいと言われた日、私は退院をした。
1ヶ月ぶりに会社に復活した私に笑顔は戻らなかった。仕事を思いっきりやりたい。でも私の体はまだボロボロなのだ。(つづく)

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