連載コラム
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コラムサラリーウーマン金太郎 ── いよいよ独立起業編
Vol.1 「全員からの辞表」
(5.May.2003)
皆様ご無沙汰していました。サラリーウーマン金太郎です。これからお届けするシリーズは、私が事業部長になり、そして会社を辞めて独立を決意するまでの3年間の葛藤を中心にお届けします。波乱万丈、金太郎の苦悩とそれをどう乗り越えたのか、今は懐かしい思い出ですが、皆さんの元気の素になったら嬉しいです。

★全員からの辞表
マルチメディアシステム課の売り上げは前年比150%の伸び、ゼロから立ち上げて5年目にして、私の課は部に昇格することも手に届くところまできていた。部下は30名近くになった。思えばこの4年間本当に大変だった。新規事業を立ち上げた時、誰も味方がいなかった。「マルチメディアなんて」と、周りは鼻で笑った。事業が多少安定して、インターネットに取り組み始めた時もまた冷ややかな空気の中で戦ってきた。ここまで出来たのは、一緒にやってきてくれたこの部下達のおかげだ。でも、一番すごいのは私自身。私だからこそ、やれた。さあ、今年こそ事業部にしてみせるぞと、私は完璧に有頂天になっていた。朝から一人ニヤニヤ笑いながら、業務の進捗状況のチェックをしつつ、コーヒーを飲んでいると、お気楽部長が珍しく深刻な顔で声をかけてきた。

「ちょっと話があるから、向こうで?」
「何ですか?」
「いや、向こうの役員応接に来てくれ」

また、コネがらみの無理難題の仕事でも私のチームに押し付けようというつもりなんだろう。まったく上司の尻拭いの仕事さえ無かったらもっと業績が伸ばせるのに。

ドアを閉めてソファに座ると、おもむろに部長が口を開いた。
「おまえの部下が辞表を出してきたぞ」
「えっ? まあ、そんな部下もいるでしょう。 私のやり方はスパルタだから」
「それも一人二人ではない」
「えっ、何人ですか? いったい誰ですか」
「・・・」
「わかりましたA君とB君あたりですね」
「・・・」
「部長、私のやり方が多少強引なのは知っているじゃないですか? だから付いてこられない部下がいたって可笑しくありませんよ。ある意味、多少の犠牲は仕方がないと思っています。こういうやり方やってきたから、新規事業がちゃんと立ち上がって、順調に伸びてきたんですよ。辞表が怖くて管理職はやれませんよ」
「皆、辞めるって言ってるんだ」
「えっ?」
「だから、お前の課の部下が全員辞めると言っている」

ガーンという大きな音が頭の中でこだまする。まるで、除夜の鐘が耳元で鳴り響きまくっているようだ。目の前が、急に白黒の写真になって一瞬気が遠くなるような気がした。その後部長が何を言っていたのか、声がまるで聞こえない。私は放心状態になった。何が悪かったのか、なぜ、なぜ、なぜ、なんでこんなことが起こったのか?

「部長、課長代理の二人は何と言っているのですか?」
「彼らが皆の意見をまとめてやってきたんだよ」

私は世界が終わったような気がした。最も信頼し、一緒に丸4年間をに苦労してきた二人の課長は、性別こそ違うが年齢はほとんど同じ34歳。一緒に夢を追いかけてきた同志だったはずだ。どうしてこんなことに。自分が奈落の底に落ちてしまった。どうすればいい、これで終わりか? 私は終わりたくはない。私は夢を終わらせたくはない。
部長が部屋から出て行ったことも気づかずに、私はそこに座り続けていた。(つづく)

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