連載コラム
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コラムサラリーウーマン金太郎 ── 激闘本番30代篇
Vol.32 「インターネット天国のキーマンたち(その4)」
(7.Dec.2001)
私はインターネット事業分野に足を踏み入れてからというもの、時代を反映する非常に面白いキーマンたちに出会い、そして「名言」もとい「迷言」を数多く聞いた。

  1. 「パンフレットと全て同じにしてくれ!」
     営業本部宣伝部がゴルフコンペのインターネット中継後、本格的にインターネットにも取り組むように指示を出したようだ。早速、現場の担当者が私の部下を呼びつけた。
    「このスキーツアーのパンフレットと同じように画面を作ってくれ」
    「これは紙じゃないですか、インターネットは画面ですよ。それに、これ料金改定が行われるはずなのでは? 新しい料金を掲載するんでしょうね」
    「何言ってるんだ、顧客からクレームが来ないようにパンフレットと一言一句同じにしてもらわないと困るんだよ。できればデザインやレイアウトもね。料金改定? それはパンフレットの修正がかかった後に、もちろんインターネットも修正してもらうよ」
    「???」
     当時インターネットは、まだマスメディアの補完メディアとしての扱いなのだ。出来上がったパンフレットと同じ画面を作るという作業が半年以上続いた。インターネットこそスピードのメディア。運航情報や料金改定などが、瞬時に一番早くアップデートされなくてはいけないと彼らが理解するのは、ずっと後のことだった。

  2. 「著作権なんて平気だよ」
     パンフレットと同じにしろっていっても……。私の部下たちは悩んでしまった。この漫画キャラクターを勝手に使うのは絶対に問題がある。著作権侵害だ。このキャラクターの使用条件の契約曹ノ、ホームページに掲載することも含まれているとは思えない。気をつけないと裁判沙汰になる。私はマルチメディアやデジタル化のビジネスを手掛けてすぐに、著作権のセミナーを2日間缶詰で受けているのだ。私の部下に宣伝部の担当者に確認するように言った。
    「このキャラクターを勝手にスキャンして使うのはまずいんじゃないでしょうか?」
    「なんでだ。うちの会社がキャンペーンで使用するために大手広告代理店を通して契約してるんだぞ」
    「いえ、その契約書には、テレビ、新聞、雑誌の広告やポップ製品への使用とは書かれているでしょうが、たぶんインターネットでの使用は含まれていないはずです」
    「何言ってる。インターネットなんて、まだオタクに毛の生えた連中しか見てないミクロメディアだぞ。使っていいに決まっているだろう。さっさとホームページ作ってこい」
    「???」
     しかたなくクライアントの言葉どおりに、ホームページにパンフレットからコピーしたキャラクターを掲載したら、数週間後に広告代理店から連絡が入った。キャラクターの版権管理をしている会社を通して、インターネットでの無断使用に関する抗議と使用するなら使用料を払えというクレームが入ったという。だから言わんこっちゃない。

  3. 「予約は宣伝無用」
     インターネット展開を提案した当初から、チケット予約・販売まで絶対に行うべきという私たちの考えは、情報システム本部から全く相手にされなかったという話は前にした。そして、インターネット活用はゴルフ中継や、アンケート、プレゼント募集、グリーティングカードという顧客サービス、販促レベルに留まっていた。
     そんな中、レインボーカラーの会社がインターネットで予約を始めた。私たちはやっぱりね〜、先にやられちゃったと地団駄踏んだが、
    「3番目の会社が起死回生でやってること、無視無視!」
     というのが某社の偉い方々ほとんどの意見だった。予約発券システムのメインフレームとインターネットを繋げ、セキュリティを確保したりするのは、開発期間もコストも馬鹿にならない。開発に半年はかかるだろう、だからこそ今始めなくては……。しかし、この段階でも手はつけられなかった。そして半年後、今度は鶴の会社がインターネットで予約発券を始めた。業界1位の会社にやられては面目丸つぶれ。自分たちもやらねばと、ついにお尻に火が点いた。そして遅れること6ヶ月。遅ればせながら、ようやくインターネット予約システムが稼動という時にお達しが出た。

  4. 「宣伝無用!」
     当時、鶴の会社が1ヶ月に7000万円くらいをインターネットで発券していると公表。しかし、この数字を誰も信じていなかったのだ。理由はパソコン通信での予約発券の実績が、現状で1ヶ月300万円だったからだ。同業他社がやってる手前、予約発券システムは作ったものの、誰もが全く売上を期待していない。だから、宣伝無用。

 しかし、1ヶ月後に驚く結果となった。全く宣伝無しで1ヶ月で3000万円分のチケットが予約されたのだ。役員会では驚きの声ばかりだったらしい。インターネットへの取り組みは業界の中でも早いほうだったのに、ビジネス活用では出遅れてしまったが、2年たってようやく、インターネットが重要なビジネスチャネルだと認識されることとなった。そして、代理店販売という常識を破って、直販が始まったのである。

 して数年後、私が某社を卒業した1998年12月頃、繁忙期は月に約3億円が予約発券されていた。21世紀になった今年、更に10倍の数字になったと聞いた。そして、将来的には航空券の半分がインターネットにより予約発券されると考えられているらしい。

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