連載コラム
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コラムサラリーウーマン金太郎 ── 激闘本番30代篇
Vol.31 「インターネット天国のキーマンたち(その3)」
(26.Sep.2001)
どうやら市民権を得たインターネット。しかしながら情報システム本部はそう簡単に、予約・発券の開発をしようとしない。同業他社は確実に準備しているだろうが、某部長が君臨する限り、開発が始まるはずもない。そのくせ、私たちと営業本部のインターネット関連のプロジェクトを気にしているらしい。
 マスメディアにできないことを行い、決定権を持つ偉いオジサマたちに少しでもインターネットのメディア価値、ツール価値を理解してもらい、更にビジネス活用のための開発に対して前向きな判断をしてもらう必要がある。そこで、オジサマたちに最も人気のある“ゴルフトーナメントのインターネット中継”というプロジェクトが考えられた。いかにも安易な発想で、いま考えると笑ってしまうが、当時はインターネットで何が出来るかということをかなり重要視していた。企業のサイトでは最新のテクノロジーを使うとニュースになり、人目を引き集客できた。今回は画像のストリーミングをして流すことと、スコア速報がポイントだ。

 9月第1週、札幌で開かれる某社主催のゴルフコンペは、プロアマ、予選、本選の6日間。営業本部の中で莫大な予算を持つ宣伝部を中心とするイベントだ。初めて知ったのだが、このイベントは、我先にと出張を希望する偉いオジサマ管理職がたくさんいるらしい。理由は、大会をちらっと見て、顧客接待と称し近隣ゴルフ場で1プレイすることにあるらしい。もちろん、これ全てお仕事なのだ。
 そんな背景もあり、インターネット中継プロジェクトは、あっという間に実施が決定した。私の事業部から、例のBくんニクリエイター2名、更にネットワークエンジニアを加えチームの体制は4名と決め、前々日入りで7日間、月曜日〜日曜日までの出張予定で、予算見積、原価計算書、出張計画等をまとめて部長に提出した。
「ええっ! 本当に4人も必要なのか? しかも前々日入りか、ずいぶん余裕がありそうなスケジュールだな。いいな〜」
「何言ってるんですか部長。全員朝から晩まで現地でインターネット中継をやるんですよ。インターネット中継は初めてのチャレンジですが失敗は許されないし大変です。」
「おまえも行くのか? まあ、最初の準備の確認だけで、日帰りか1泊でないと認めないぞ。なんで俺の枠はないんだよ。まったく本社の奴らときたら……」
「月曜、日帰りしたいと思っていますが、時間的な余裕が無く、翌日の朝イチで戻ります。水曜と木曜は熊本の訓練センターで定例の打ち合わせがありますから」
「そうだったな〜、1週間のうちに札幌と熊本か。美味しいものが食べられていいよな〜」
 もう! 話しにならん!! と思った。

 準備は思った以上に大変だった。それでも月曜の早朝から入った中継チームは私が到着した夕方には、準備万端のVサインを出してくれていた。しかし夜、彼らと夕食をしながら、スケジュールを見て驚いた。

  • 4時
  • 起床
  • 4時20分
  • ホテルフロント集合 ゴルフ場へバス移動
  • 5時〜
  • 中継準備開始
  • 6時〜
  • 選手の練習風景を撮影、すぐにホームページに掲載
  • 7時〜16時
  • ゴルフトーナメント中継
  • 16時〜20時
  • ゴルフトーナメント中継
  • 21時
  • ホテル到着 解散
 彼らはこれを5日間続けなくてはならない。翌朝は宣伝部長やクライアント担当者たちにお世話になりますと挨拶して管理職としての役割を終え、任せておけよという4人の笑顔を信じて東京に戻った。

 そして翌日(水曜日)、熊本での教育訓練に関する定例打ち合わせを終えて、木曜日の午後に会社に戻った。すると、部長が待ち構えていた。
「おまえ土曜日早朝に札幌に入れよ。なんか宣伝部長がインターネット関連の責任者はいないのか言ってるらしいぞ。最後のパーティにも出るのが当然だとさ」
「私は熊本から帰ってきたばかりですよ。部長、このゴルフ大会行きたいとおっしゃってたじゃないですか、部長が行ってください」
「なんで俺が頭下げに行かなきゃならないんだよ。お前の仕事だろ。それに部下がボロボロらしいぞ。ちゃんとフォローしろよ」
 まったく! 最初は1週間ずっと現地にいるつもりで熊本の出張をずらそうとさえしてたのに。現地スタッフに電話をしたら、本当にかなりスリ減っている。これは飛んで行かねば。

 金曜日1日だけ会社で仕事をし、土曜日の早朝7時の飛行機に乗り、昼前に現地入りすると、チーム4人全員が殺気だつような顔と真っ赤な目をして頑張っていた。急いで宣伝部長を探し、管理職不在の不備を詫びた。
「いや、僕に詫びなくていいんだよ。君のところのスタッフは本当によくやってる。やっぱりこういう大仕掛けの仕事の時は、どんなトラブルが起こるか分からないだろう。管理職が側にいるだけで、安心ってものだよ、だから君をよんだんだ。いや今回のことでインターネットの凄さを知ったよ。テレビでは2時間枠の中継だけだが、インターネットではこの大会全部が見せられる。スコア速報もできた。宣伝部としてもインターネットを見直す時期だと感じたよ」
 ただの豪快なオジサマだと思った宣伝部長がこんなこと言うなんて。無駄な苦労は無いんだと思った。その夜、最終日を前にチーム4人とお寿司の食べ放題に行った。最終日を残して緊張する彼らの顔が、また一段と逞しくなった気がした。彼らの1週間の頑張りを考えると、今週の私の3回出張なんて……、疲れが吹き飛んだ。

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