連載コラム
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コラムサラリーウーマン金太郎 ── 激闘本番30代篇
Vol.29 「インターネット天国のキーマン達(その1)」
(20.Jun.2001)
正式にエアラインA社のホームページが世の中にお披露目されたのは1995年だった。
 当時は、トップ画面のデザインを何にするかが、部長以上の役員を含めての、関心事となっていた。結局、栄えある最初の画面は、雑誌広告等で使っていたキャビンアテンダントのお姉さん(もちろんモデル)の写真。しかし、このページは会社で見ても20秒近くかかる。自宅でダイヤルアップで見れば、ゆうに1分待ち。今だったら、それは犯罪だろうと笑われそうなくらい巨大なデータを扱ったために、ページがなかなか開かないのだ。
 それでも、見た目が一番、デザイン一番の時代だったから平気だった。だって、ライバル会社も、これまた1分かけて鶴マークの飛行機が出てきていたくらいだから。

 それに、インターネットのプロジェクトに対する評価は低かった。双方向メディアの可能性や、インターネットの爆発的な発展成長など予測できないばかりか、まあ考えもしていない人達が一般的だったのかもしれない。
 それでも、このプロジェクトに関わる人達は、未来の模索のためにも予算を確保し、いろんなチャレンジをしようと奔走した。

 まずは、お金がたくさんある営業本部の宣伝部だ。しかし宣伝部のS部長は鼻で笑った。
「ねえ、君、このインターネットとやらを1日何人が見るわけ? うちはね、マスメディアじゃなければ意味ないのよ。新聞、テレビは何百万人が見てるんだよ。比較してごらん」
「でも部長、双方向性のあるメディアというのは、今後、非常に可能性があるわけで、利用顧客に関してのアンケートにしろ、顧客デ[タベースにしろ……」
「もういいよ。パソコン通信に毛の生えたのがインターネットなのだから、どうせお宅しかやってないだろう。それにミクロメディアだろ。全く興味ないね。それに、顧客データベース? うちはエアラインA社カード会員が既に4万人いる。その会員に対して半年に1回、住所確認をするだけで大変なんだよ。会員化しても、収益は会報誌に広告とるぐらいだよ。それにね、うちの宣伝とかマーケティングは、基本的に、全部、電博に任せてるんだよ。彼らはプロだから。バジェット渡せばちゃんとやってくれる」
 私はCRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)という言葉を知らなかったが、代理店の友人はたくさんいた。だから、このS部長の発言ってかなり危険だと思った。ただ、なす術はなくため息をつくのが関の山だったけど。

 次の協力部署として考えられる情報システム部に行ってみた。ここの部長はパイロット教材のマルチメディア化の担当管理職だったから知らない人ではない。きっと理解してくれるに決まっている。
「植田くん。インターネットだって? ふざけないでくれ。僕は絶対に反対だよ。メールなんかが流行ったらとんでもないことになる。ホームページで情報が取れるって? 絶対に部下には使わせないよ」
「でもY部長。なんでそこまでインターネットを嫌うのですか?」
「そんな簡単なこともわからないのか? もしインターネットが普及したら、みなパソコンで仕事ができてしまうんだぞ。そしたら飛行機に乗って出張したり、人に会ったりしなくなるんだ。とんでもないことだろう。だから俺の目の黒いうちは、インターネット推進なんてことは絶対にやらせないからなんだ」
 全く文明開化に乗り遅れた原始人に出会ったような衝撃だ。言い返そうと思ったけれど、顔がマジでもう怒っているので引き下がることにした。

 インターネット&ITの活用の未来に開眼しているのは、私のマルチメディア事業を応援してくれてきた、関連事業本部のみなのだ。まずい、これは四面楚歌だ。私と関連事業本部は、そこである作戦を考えた。

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