連載コラム
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コラムサラリーウーマン金太郎 ── 激闘本番30代篇
Vol.25 「部下との戦い Part2 2週間前の告白!」
(14.Feb.2001)
システムエンジニアAに聞いた。
「あなた1年前に転職してきたけど、この会社で何をやろうと思ったの?」
「パソコン周りのシステム開発、特にこれからはネットワーク開発が大切だと思ってます。パッケージソフト(ビジネス)も作ってみたいですね」
「わかったわ。あなたのやりたい仕事は、私のところで全てできるようになるでしょう。その代わり、欠勤は許さないし、勤務態度は改めてもらいます」と見栄をきりながらも、その時点ではインターネット時代を予知していない私は呆然とした。そこに羽田のシステム課のS課長から電話がかかってきた。
「おまえのとこの課に異動させたAに開発担当させるはずの案件が決まったんだよ。うちのSEを上につけてやるから、この開発はマルチメディア課に任せた」
「ちょっと待ってください。何のシステムか聞いてないし、詳細設計は済んでますか? 概算見積ではない本受注なんですか? 親会社(エアラインA社)の仕事は最初にちゃんと決めておかないと、いつも開発ボリュームが膨れて、工数がかかって赤字になるんですから」
「何言ってるんだ、俺が決めてきてる。3ヶ月で開発だから9月納期だよ。たいしたことない3人で月で総額400万円程度の仕事だ。開発の進捗責任はうちの主任を当てるから、お前は挨拶だけ行けばいいんだよ。口出す必要は全くなし。俺から売上プレゼントだ、素直に喜べよ」
 嫌な予感がした……。エアラインA社出向社員の管理職が口約束をベースにとった仕事など……、過去に直属の上司の紹介ルートで何度貧乏くじを引いたかわからない。
 挨拶もそこそこに、すぐに開発が始まった。内容は、乗客の搭乗人数とスチュワーデスの数のバランスを取ってスケジュールを管理するというプログラム。それまで数名の人間のノウハウで手作業でやっていたものを、プログラム化するというのだ。システム課の主任とAが毎週のように、担当者のところにヒアリングに行き開発は進んだ。報告はいつも問題なし。そして納品の2週間前になって、Aが私のところにやって来た。
「あの、納期が間に合いません」
「あれ? バグでも出たの? どのくらい遅れそうなの?」
「バグではありません。開発してなかった部分があって1ヶ月遅れます」
「ど、ど、どういうこと?」
「国内線のプログラムだけで、国際線のを開発するの忘れてたっていうか……」
 氷水をかけられるというのはこういうことか。私はAを連れて、すぐに羽田のシステム課に行き、課長に聞いた。
「開発してない部分があって、納期が遅れることになるってご存知でした? 進捗管理はシステム課の主任にやっていただいているので、私には問題なしの報告しか……」
「困るな〜。何言ってるんだよ、部下の仕事だろ。俺達はヘルプしてやっただけで、売上は回してるだろう。今さら、何だよ、俺を巻き込むなよ」
「分かりました、今は責任の所在の文句でここに来たわけではありません。クライアントのセクションにお詫びして、納期延期のお願いに行かなくてはなりません。最初はS課長が決めたお話ですし、一緒に行っていただけませんか」
「嫌だよ。なんで俺が謝りにいくんだよ。知らないよ」
 仕方がない、部長のところに行き同じ事情説明をした。今回のトラブルは私1人が謝ったくらいでは埒があかないのだ。しかし部長の答えは
「俺がなんで同期の奴に謝らなくてはならないんだ。とんでもないよ。自分1人で解決しろ。お前は管理職なんだろう」
 さすが、いかにもの模範的なお答え。私はAを連れて、空港にあるクライアントの部署の事務所に向った。頭の中では、部下のことでもO課長のことでも部長のことでもなく、自分自身の仕事とマネージメントに対する甘さ、腹立たしさでいっぱいだった。これは乗り越えられるだろうか。私の深刻な顔に、Aはクライアントの前で罵倒されることを覚悟していたらしい。

 私はクライアントに向って言った。
「申し訳ありません。システム課から引き継いだ案件ですが、私がマネージャーとしてきちんと理解していなかったために、進捗管理を怠りました。開発者は非常に勤勉で一生懸命開発しております。今回の納期判断に関するミスは、引き継いだ段階で私が申し上げるべきでした。多大なご迷惑をおかけすること、本当にお許し下さい。しかしプログラムのクオリティも含めて、仕事は完璧にやらせていただきます。どうか1ヶ月納期延長をご検討いただけないでしょうか」
 クライアントの担当者と部門長はさすがに驚き怒った。
「最初に、君が受注したわけじゃないだろ。なんでシステム課の課長が来ない。なんで君の上司のT部長が来ない」
「いえ、この件は全部私が悪いのです。本当に申し訳ありません。彼らではなくこの仕事に関するマネージメントの責任は私ですから」
 私は机に額をすりつけて謝った。
 次の瞬間、クライアントの顔が急に優しくなった。
「植田くん、ごめんね。君のとこのエアラインA社の出向管理職は、僕達の同期や友達だ。今回のトラブルは問題があるけど、君を責めるつもりはないよ。君がそんなふうに謝ったり部下を守ったりする姿を見ると、僕達は恥かしいよ。かなりわがまま言って、君の部下の開発を遅らせていたのも事実だ。納期は1ヶ月延ばそう。待つよ、だからしっかり頼む。君も苦労するね。プロパーの女課長なんて思ってたけど、なかなかいいね〜。頑張れよ!」
 本当にほっとした。緊張がゆっくり解けていった。

 帰り道、Aが言った。
「植田さん、ご迷惑をかけました。申し訳ありません。もう二度と植田さんに土下座させるような仕事はしないことを約束します」
 その日からAが変わった。彼はその後、関連会社のイントラネットの開発を行い、それをベースにパッケージソフトの設計・開発を行った。もちろん、無意味に有給休暇を取ることもなくなった。

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