連載コラム
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コラムサラリーウーマン金太郎 ── 激闘本番30代篇
Vol.22 「お国の仕事 Part1 あなた達はいったい何者?」
(20.Sep.2000)
私の親友でもあるTBSの魔女っ子のりこが電話をかけてきた。通産省の課長が、マルチメディア人材育成のイベントに興味を持ってるんだけど一緒にやらない?
 彼女が送ってきた企画書は、マルチメディア業界を担う若いクリエイターの育成という、以前からの私達共通の夢が盛り込まれたものだった。企業相手の駆け引きの多い仕事に若干マンネリを感じていた私が、通産省に説明に行くという彼女に「いいよ。アドバイザーとしてボランティアで同行するよ」と軽い気持ちで言ったのは、1996年の夏だった。
 それから1週間後、場違いに派手な服装の女性2人組は通産省のある部署を尋ねた。こういうお国の組織にうとい彼女と私は、課長という立場は一般企業の課長レベルと考えていた。のりこの友達である彼は、私達より2〜3歳若い32〜33歳の生え抜きのエリートらしいが、純粋で真面目で、ちょっと世間知らずの印象。まあ、どうせ無理な話だと思いながら、私達は壮大な夢を話したら、意外にも本気で興味を持ったような顔付き。「さらにこれを進めたい」という最後の言葉はどういう意味なんだろう。
 後で知ったが、省庁の課長というのは、放送局や大手企業の社長ですら、ある場面では、「ははあ〜」と頭を下げるほどの力を持っているらしい。案の定、私達の提案はあれよあれよと実現化の方向に進んでいった。乗りかかった船だし、私の上司もお国の仕事は大賛成。当時の私の会社の社長は、エアラインA社の専務でもあり元郵政省のお役人。なんだかんだと、今までになく会社経営陣もエアラインA社本体も応援してくれそうなプロジェクトだ。
 しかし、そういう時は悩みが他に発生するものだ。お国の仕事というのは面白いシステムになっている。私達の会社が直接に受託することが難しくて、○×振興協会なる外郭団体を通して間接的に仕事が発注される。この○×振興協会の理事は、もちろん省庁から天下っており、他のスタッフは協会に登録されている大手企業からの出向者によって組織されている。ある分野の産業を振興させるために、イベントやセミナーをやったりして研究報告書を作り、国に提出するのがお仕事。しかし出向者はそれぞれの企業の部長や課長クラス、つまり中間管理職ばかりのために企画力、実務能力は非常に弱い。判断とマネージメントが得意な人達の集団だからしょうがないのである。このような組織に対して、プロジェクト案件が発注され、それが民間企業にさらに再発注されるという仕組み。もちろん協会は20%ほどの収入を計上する。今回の場合は、この○×振興協会の部長(某電気メーカー出向)が全てにおいてのプロジェクトに絡んでくる。
「マルチメディア人材育成プログラム」という、全てのクリエイターが、本当のクリエイティビティを学ぶためのワークショップ。NY大学と南カリフォルニア大学から、その道の権威の学部長クラスの教授(2人とも女性)を招待して、実践で教えてもらうという大胆なカリキュラム。基調講演ももちろんやるが、目玉は20数名の参加者を募集しての、英才コラボレーション教育。コンセプトも目標もスタッフも完璧。しかし、なかなか話が進まない。まず、受講希望者を選ぶための審査会には、○×大学の教授を委員長にして、AさんBさんCさんを審査員にしてやろう。この審査会を通過した人だけを受講させる。笑えるのはお国のプロジェクトにもかかわらず、受講生から参加費を5万円も取ることに決定してしまった。
 お金を安くすると真剣に学ぼうとする人が来ない、と考えたらしい。少数精鋭を金額で振るいにかけたわけだけど。したがって地方からの参加希望者も東京での2週間の滞在費用と休暇が必要ということで、参加したくても二の足を踏んでしまった。しかも審査会などのスケジュール調整に忙殺され世の中に告知することさえままならず、なんとか『ぴあ』に広告を出せたくらいだった。結局、申込み人数は定員プラス1の21名しかなかったのだ。1名は誰を落すかという議論や、申し込み者のレベルが低すぎるという不毛な議論で3時間は過ぎた。
 某大学学長、当時一世を風靡していたマルチメディア制作会社の社長達(今は跡形もなし)は、いったい本当に次世代のクリエイター育成考えてるわけ?
 さらなる追い討ちは、研修自体を最も設備の良い環境で、しかも交通の便利なところと考え青山のテピアホールを予定していたのに、土壇場になって、万博がなくなったせいでまるで使われてない、お台場の東京都の外郭団体の施設を使うようにという○×振興協会からの突然の指示。「えー! ゆりかもめで何もない場所に2週間も通わせるのですか?」とは思ったが、協賛するというのだから、無料で使用できるなら納得しよう。現地の設備チェックに、のりこと二人で行ったらパソコンも満足に入っていない。しかも通常の料金を取るという。またしても外郭団体! あなた達、いったい何者ですか?
 私とのりこの素晴らしい夢のセミナーは、果たして成功することができるのだろうか……(Part2に続く)。
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