連載コラム
spc

コラムサラリーウーマン金太郎 ── 激闘本番30代篇
Vol.12 「自由と孤独——金太郎の恋愛」
(17.May.2000)
31歳でこの会社に入った頃、私は真剣に交際をしている同年代の男性がいた。君の人生は僕が支えるなんて結婚をほのめかすような会話もしていた。転職を決めた頃、そして転職してからの1ヶ月はストレスとプレッシャーから夢でうなされることも多く、そんなギリギリの気持ちの私にとって、最後どうしようもなくなったら、彼に人生をたくしちゃおうなんて、安全ネットのように思うようになっていた。それが3ヶ月たって、新規事業でマルチメディアをやろうと決めて行動し始めてからというもの、仕事にのめりこんでいった。相手の存在が自分の心の中で占める割合は減り、デートの時ですら仕事の話ばかりしていた。気がつくと、彼は恋人ではなくただの友達になっており、しかも他の女性との結婚が決まっていた。まだまだ、次の人が現れるさと思いながらも、惜しかったかなと思う気持ちもあり、複雑な思いで1人のクリスマスイブを過ごした。  次の年に、出会った人は4歳年上の青年実業家だった。自信満々そうな外見とは正反対にとてもマメで優しい人だった。自分が手がけているプロジェクトを事業化していきたい、会社でも出世したい、だからそのためには残業も100時間する。プライベートより何より仕事優先という私を余裕のある顔で見守ってくれた。会社のビルの下で1時間半も車の中で待たせたり、約束を当日キャンセルすることは山ほど。
 そのくせ、深夜12時過ぎに「寂しい、お腹すいた」と言う私の悲鳴に近いわがままを何でもかなえてくれた。イベントで幕張へ4日間通い続けると言えば、近くのシティホテルを取ってくれた。大きな案件の納品前に、40日も会えずにいたら、深夜マンションの前に車を止めて、ケーキとワインを持って待っていた。そんなときですら、仕事のことで頭の中が爆発しそうな私は
「何してるの、約束してないのに。近所の人に変に思われるわ。それに私、死ぬほど疲れているの、だから……」
 よく2年近くもその状況で私と付き合ってくれたなと思う。そして彼があるとき言った。
「君は僕のアルバムの中で、僕の次のページに写真が載る人だと思っているよ。僕達の結婚を想像してみないか」
「何でそんな想像をする必要があるの。私は今、自分の仕事が大事。こんなわがままな私を大事にしてくれる貴方が大好きだけど、貴方と結婚したとしても何もしてあげられないもの」
「家事を君にやってもらいたいなんて思わないよ。それはどうにでもなるさ。仕事もやればいい。ただね、僕の会社の仕事を一緒に手伝ってもらえればと思う」
「何、いってるのよ。あなたの会社の仕事になんて全く興味ないわ。私は今やってるマルチメディアがいいの。これは夢のような世界で、これからありとあらゆる可能性があるんだから」

 この会話の後、1ヶ月もたたないうちに、この彼とも別れがやってきた。それから6ヶ月後、またやってきた1人のクリスマス。会社の部長ともう1人の女の子と3人で、しゃぶしゃぶ食べ放題をむさぼっていたクリスマスイブ。仕事に生きるんだ、後悔はしてないと思っていたけど、家に帰ったら猛烈に寂しくなった。
 仕事をガンガンに頑張りながらも、かっこ良く恋愛もうまく両立させられるなんて思っていた。相手が自分に惚れていれば平気と思っていた。相手のことを大切に思った瞬間がどれだけあったのだろう。
 この2人の男性は恋人を遥かに超えて、最大級のプレッシャーとストレスの中で戦い続ける私の安全地帯だった。安全地帯をなくした私は、完璧な孤独との戦いの中に身をおいていく。「自由と孤独は背中合わせ」。
 自分が思うように100%生きるということは、結局のところ自分1人で生きるというところに追い込まれていくということを知り、それでも今はそれを選ぶと思ったのは、管理職の辞令をもらう直前、34歳の時のことだった。

Top↑
spc

close