連載コラム
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コラムサラリーウーマン金太郎 ── 激闘本番30代篇
Vol.9 「鴨ネギの原理!」
(29.May.2000)
エアラインA社の運航本部での大きな案件の受託が次々に決まり、開発実績が積まれていく中、私及び私の展開する事業に対する社内外の評価が高くなってきたものの、私は次の壁にぶち当たっていた。
 親会社の仕事だけをやってもいずれ限界は来る。早いうちから他の一般企業へ営業展開を考えなくてはならない。というより、親会社への下請け的な営業にいいかげん辟易していた。しかし、一般の企業の中から事業展開としてマルチメディアシステムを活用したいと思っている部門を探して営業することなど、砂丘のダイヤ探し。それこそマック二宮金次郎を展開することだって不可能。でも、この実績&ノウハウは、あらゆる企業で応用展開することができる……あまりにもったいない。
 当時、開発&教育のパソコンがマッキントッシュだったので、アップルコンピュータのマーケティング関連部署とは親しい関係で、たまに彼らの要望で他の企業で講演をしたりしたのが思いのほか、好評だった。また、前のマックワールドでの講演を人づてに聞いて相談にくる企業もあった。
 そこで、私はある営業の方法を考えついた。実践セミナーを展開するのだ。それも、ただの講師が話すのではなく、私達の実践的なノウハウを教えてしまうのだ。もし、この有料セミナーに参加する会社があれば、それはすなわちクライアントになる可能性が高いというもの。これはお客がわざわざ来てくれる、「鴨がネギをしょってくる」原理だ。他社がやっているセミナーを調べたが、最新技術等や海外事例ばかり、実践ノウハウを教えるものなどない。これは、やるしかない!
 企画をまとめて、上司に見せると、やはり反対だ。理由は集客、場所、費用。
「誰が話をするんだ、興味を持つような中身にできるのか? 告知は? 誰にDMだすんだ? セミナーをやる場所は? やって本当に仕事がとれると保証できるのか? それに3万円も出して誰がこんなセミナーに行く? 俺なら行かない。第一、セミナーをやるために割く人件費を考えろ、100万円はかかるんだぞ」
 あなたなんぞに新規事業を何か言う資格もないし、私の上司であるなんて100万年早いと、いつものように心で叫びながら、「じゃ、全てクリアすればいいんですね」とつぶやき席に引き下がった。
 まずはこのセミナーの付加価値を高める。これは簡単。まずはセミナーの主旨をエアラインA社の関連部署に説明し、パイロットやスチュワーデスの教官たちの協力を取り付ける。次にセミナーを共催のパートナーとして、アップルコンピュータを口説く。当時、ビジネス市場への参入とマルチメディアパソコンのイメージを浸透させたかった彼らとは、思いがすんなり一致。彼らの顧客に対してDMを打つこともOKだし、場所は彼らのマルチメディア対応のセミナールームに決定! 後は費用だ。この段階で主催協力企業は取りつけてるわけだから、人件費等を負担してくれる協賛金をポンとくれるお大臣が……。そこで、マルチメディア分野への参入に躍起になっている某商社に目をつけた。○×商社のマルチメディア事業部の部長に来てもらい、私の上司を同席のもと、セミナーの協賛の話をもちかけた。
「このマルチメディア実践セミナーでは、エアライン実績をもとに他の企業での導入例をイメージしたデモンストレーションデータを10本用意します。協力パートナー関係は以下の通りですが、協賛してくださる企業を1社だけ考えています。このご協賛は一種のパートナーシップ関係と同じで、私達の今回のプレゼンデータ等は全て使用する権利を与えます。数社とお話させていただきますが、3週間後にセミナーを控えていますので、今週中に結論を出すつもりです」
 あたかも引く手あまたのような話しする私に、上司は呆れ顔。しかし、意外なほどすんなりとした答えが。
「ぜひ、弊社に協賛させてください。ところで協賛金はいくらですか?」
 さあ、いくらと言おう。一瞬、上司を見たら目が泳いでいる。
「協賛金は今回はとてもリーズナブルに感じられると思いますよ。500万円です。これで単なるセミナー協賛ですが、データの使用権まで手に入るのですから」
 上司の額から汗が噴出している。
「良かったです。500万円なら僕の決済範囲ですから1週間以内に必ずご返答しますので、弊社を一番のパートナーということで他とのお話はお待ちください」
 彼らをエレベータホールまで送って、上司に向き直った。
「いいですね。会社は一切のリスクと躊躇するテーマを私はクリアしました。だから来月のセミナーは実施させてもらいます」
 もちろんこれは大成功。3万円と決して安くはないセミナーに定員50名が満杯。参加者は有名企業ばかりだった。その参加者の中から5社ほどが、クライアントとなった。その後、3〜4ヶ月に1回の割合で同様のセミナーを開いた、関西でも行った。
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